“ワーケーション”という言葉が認知される前から、暮らしやはたらき方のなかに、その生き方を取り入れてきたフロンティアの人たち。彼らが見てきた”これまで”と”現在地”を伺いながら、これからの私たちのライフスタイルを考えてみます。今回お話を伺うのは、都市や地方でバンライフを取り入れながら、新しい暮らしを常に実装してきた渡鳥ジョニーさんです。

(聞き手:No.24 藤田祥子)

渡鳥ジョニー

2004年慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学中に始めたウェブ制作のスキルを活かし、外資系広告代理店で、Webエンジニアリングとデザインを担当。2007年よりフリーランスに。Googleのキャンペーンボーイとして全国各地をまわる。2011年に熊本へ移住し、「古民家リノベ」「高品質低空飛行生活」など震災後の暮らし方を模索。2014年に「札幌国際芸術祭」への出展を機に札幌へ転居。2018年東京に戻り、ベンツをマイホームに「都市型バンライフ」を開始。現在は、妻のはる奈さんとバンライフを満喫しながら、定額制コリビングサービス「LivingAnywhere Commons」八ヶ岳拠点にて、プロデューサー兼コミュニティーマネージャーを務める。
https://vldk.life
https://van-a-table.life
https://twitter.com/jon_megane

-ジョニーさんが実践されている「Vanlife(バンライフ)」についてお伺いできますか?

欧米を中心に、家をもたずに一握りのものを携えて、バンで暮らす若者が増えています。「車上生活」と単純に翻訳してしまうのはもったいないほど、彼らは自由なその生活を楽しんでいます。自分たちのライフスタイルを自分でつくり込んでいくことが、バンライフの大きな特徴で、20世紀型の資本主義を脱却しようというムーブメントの影響を大きく受けています。

僕自身は2018年にきっかけがあって、北海道から東京へ戻ってきました。そこではじめたのが「都市型バンライフ」でした。戻ってきた東京は相変わらず高い家賃で、そのために満員電車に揺られて仕事に行く。地方で自由にのびのびと暮らしていた自分にとっては窮屈でしかなかったんですよね。僕はいろんなことに縛られるのが嫌いなので、東京でも、もっと自由に、もっと豊かに暮らすには?と、考えたどり着いた方法が「都市型バンライフ」でした。

車内にはベッドはもちろん、キッチンも備えてある

幸いにも戻ってきた東京には、シェアサービスが充実していました。Wi-Fiもあちこちにあるし、シェアリングエコノミーの実験場である永田町GRiDには、キッチン設備もあったり、洗濯宅配サービスがあったり。フィットネスジムに行けばジャグジーにもはいれます。寝る部屋と本当に必要だと思うものを車にのせて、あとは全部シェア。永田町でホームレス、ベンツに乗って駐車場で寝泊まりするという暮らしをはじめました。

―いま停泊している八ヶ岳では、「LivingAnywhere Commons 八ヶ岳」の運営を手掛けているそうですね。その活動についても伺えますか?

あらゆる制約に縛られることなく、好きな場所で、やりたいことをして暮らす生き方を実践するための”コミュニティ”が、LivingAnywhere Commonsです。現在は、南は沖縄から、北は岩手県の遠野など日本全国11カ所に展開しています。そのなかで、僕が担当しているのが八ヶ岳です。

ジョニーさんが運営を担当する、LivingAnywhere Commons八ヶ岳北杜

東京から2時間でアクセスできる場所で、保養所とボーリング場の跡地を活用した3000㎡という広大な敷地。正直ここに来たときは「中途半端だな」と感じました。建物をつくり込むには広すぎる、さらにお金もかかるし、どうしようかと。これは知恵が必要だなということで考え抜いて出た答えが「お外からはじめよう」でした。

八ヶ岳の拠点は、単にキャンプやワーケーションができる場所をつくりたいわけでもありません。『休暇に自然の中でキャンプを楽しんだり、温泉に入ったりして、その傍らで籠もって仕事する』となると、休日に働いているのと変わりません。新しいライフスタイルが生まれるような、イノベーティブな場にしたいと考えました。

屋外でものびのびと仕事ができるように、電源・Wi-Fiに困らない仕組みも実装済み

-Be Outsiders(アウトサイダーズ)という言葉も、気になります。

この言葉にはいくつかの意味を込めています。僕が指す「お外」というのはお家の外だけではなくて、都市の外、想像の外、常識の外などです。Outsidersというのは、辞書で調べるとネガティブな言葉なんですよね。でも常識とされていたものが非常識になる、これまでは世の中ではアウトだったものがセーフになっていく。これまで積み上げてきたものをバラして、一度ゼロベースでつくりなおしてみる。そういう意味で、もう一回お外からはじめてみようというメッセージを打ち出しました。

といってもまだはじめたばかりで、ここにはまだ何もありません。2022年に100%オフグリッドの目標を掲げ、自分たちの手でつくっていっているところです。

妻のはる奈さんとともに、バンライフを一生続けていくのがジョニーさんの夢

―これから、ここをどんな場所に育てていかれるのですか?

僕たちが実践しているバンライフは、実はオフグリッドの問題を抱えています。いま目指しているのは、衣食住や水光熱、トイレやお風呂に至るまで、通常のインフラの制限から解き放たれ、自分たちで暮らしをつくれるようにしたいと思っています。そこでこの八ヶ岳も、2022年のオフグリッド化を目指して動いているところです。

先進的な設備を備え、ものづくりができるFABも整備中

僕たちのように「自分たちの暮らしを自分たちでつくりたい人たち」に、まずはここに集まってきてもらえたら嬉しいなと思っています。バンライフを始めている人たちは消費文化に疑問を持っている人が多くいます。自分たちの欲しいものを自分なりにつくるという人たち、そういう人たちをぼくはメイカーズと呼んでいます。

メイカーズ、シフターズ、ローカルズの3つのターゲットを想定している。

僕がそうだったように、自分の理想とするライフスタイルを実現するための実験場としてここを使っていってもらえたら嬉しいですね。

「こんなことやりたいな」というアイデアを形にできる、そしてそこに集まる人たちでアイデアを磨いていく。そんな場になれば、もっともっと新しいライフスタイルが広がっていくんじゃないかなって思います。

―ここに来れば、なにか自分にも化学反応が起こるかもしれない!とわくわくしますね。

そうですね、僕もそういう場所にしていきたいと思っています。ただのワーケーションの場でもないし、ただのキャンプ場でもない。オンとオフを細かく繰り返しながら、自分の暮らしやはたらき方をチューニングしていく。なにかものをつくったり、仕事をしたり、焚き火をしたり。暮らしとはたらくことの境界線がゆるやかで曖昧になっていく。

なにか学びがあるというより、アンラーニングに近いかもしれません。ふらっとここに来ることで「あ、こんな暮らしできるんだ」って発見してもらえたらいいなって。そんな中でさまざまな人たちに新しくておもしろいことが生まれていく、そういうきっかけをみなさんに掴んでもらえるよう場所を作っていきたいと思います。

LivingAnywhere Commons
全国11拠点(※)に展開している多拠点コリビングサービス。場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方(LivingAnywhere)の実践を提唱している。同サービスのメンバーになることで、日本各地に設置したLivingAnywhere Commonsの拠点の共有者となり、仲間たちと共生しながら、自宅やオフィスにしばられないオフグリッド生活を体感、理想のLivingAnywhereを実現するための技術やアイデアの共創、刺激に満ちた環境に身を置くことができる。
https://livinganywherecommons.com/
※2020年11月現在

Photo: ©Van à Table