2020.11.23 | 未来の働き方を考える4日間
report
淡路島に拠点を置き、日本の新しい働き方を追及しているシマトワークスが、2020年の秋にワーケーションの実施に向けて動き始めました。
今回は、2020年9月に行われたモニターツアー「未来の働き方を考える4日間」に参加した私が、体験レポートの筆を執らせていただきます。
島の外で生まれ育った私から見た”淡路島の魅力”や、ワーケーションの可能性をご紹介します。
2015年関西学院大学総合政策学部卒業。1992年大阪生まれ。東京の出版社や編集プロダクションで務めたのち、Web記事制作の会社を設立。自身で記事執筆を行う傍ら、フリーライターの方たちの育成に尽力している。
「ワーケーション」は、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、2000年ごろに生まれた言葉だと言われています。
近年はコロナの影響から、新しいライフスタイルや働き方に注目が集まるようになりました。中でも、ワーケーションは観光地などでくつろぎながら仕事を進められるほか、コロナで客足が遠のいた場所にも旅行客が訪れるため、地方の企業や自治体が力を入れている取り組みです。
ワーケーションの実施には、Wi-Fiや電源など作業環境が欠かせません。今回のモニターツアーを企画したシマトワークスさんは、十分に作業できる環境を整えるだけでなく、地産地消の食事や淡路島の魅力を存分に体感できるプログラムや、働き方を見直すプログラムが用意されていました。
2020年の秋に本格始動とのことなので、ワーケーションに興味がある方は以下のプログラム内容をご覧ください。
モニターツアーは、9月25日(金)〜9月28日(月)までの4日間にわたって行われました。
内容を大きく分けると、金曜と月曜は自分の仕事に集中する「ワーケーション」、土曜と日曜は仕事から離れて自身を見つめ直す「リトリート」です。
シマトワークスさんが企画するワーケーションは、ただ観光地で仕事するわけではありません。
今回のプログラムを通して参加者が自身を見つめ直せるよう、また心身の健康を保てるよう以下の方々と共同で進めていました。
ワーケーションやリトリートで何をしてきたのか、1日ごとに見ていきましょう。
1日目の集合時間は10:00。途中参加を含めてモニターツアーの参加者は6名でした。
開催が淡路島だったので、関西で働かれている方が大半でしたが、東京から参加している方も。
洲本バスセンターから車に乗り込み、4日間滞在する宿泊施設へと向かいます。到着した場所は、バスセンターから車で20分ほどの由良町にある「エトワール生石(おいし)」。
山と海に挟まれ、周辺には豊かな自然が広がっています。
エトワール生石は海のすぐそばに建っているため、食堂やロビーなど施設内の至る所で海の眺望が楽しめます。
シマトワークスさんからワーケーションの簡単な説明を聞き、早速ワーケーションがスタート!
1日目は天候が雨だったので、外で仕事はできませんでしたが、参加者はそれぞれが気に入った場所で黙々と作業に集中していました。
そして、12:00にはお昼ご飯を食べに「新島水産」へ。
この日は、今回のモニター特別メニューとして近海で獲れたタイやシラスなどを使った海鮮丼をいただきました。
魚介の旨味が口いっぱいに広がり、さらに中央に添えられた玉ねぎが絶妙にマッチ!淡路島の食に胃袋がガッツリ掴まれました(笑)。
食後は宿舎へと戻り、ワーケーションとして17:00まで仕事を続けます。17:00〜19:00までの2時間はワークショップの時間です。
ほぼ全員が初対面なので、まずは自己紹介からスタート。
二人一組になって「相手のニックネームを付けること」を目標に、ペアになった人のことを深く知るための時間が設けられました。
私は、奥さんと出会ったきっかけが「はとバス」だったので、「Mr.はとバス」の名前を授かりました(笑)。
仕事のことだけでなく、プライベートでお酒ばっかり飲んでいることや、「将来は世界の人たちと一緒に仕事をしたい!」など、さまざまな話しを通じてメンバーと打ち解けることができました。
このほか、絵を描くワークショップも。今の自分が心の中に思い浮かべるものを一枚に絵にする時間は、普段の生活では滅多にやらないことだったので、少し戸惑います。
描き終えたら、みんなで絵を見せ合いますが、「最初に手に取った色が茶色の人は、安定を求めている」などの、心と行動がつながっている瞬間を実感した時間でした。
仕事ばかりしていると、論理的な思考を担当している左脳を使いがちです。しかし、こうして「右脳を使う」というのは、新鮮さよりも、どこか懐かしさを感じさせます。
ワークショップが終わり、19:00からは夕食。
淡路牛を使った鉄板焼きやタイの煮付け、ハモのフライなど淡路島の旬の食材が膳を彩ります。
今回のモニターツアーでは、1日目のみお酒が飲めたので、お酒が好きな参加者は大事に飲んでいました(笑)。
リトリートがメインとなる2日目は、朝の6:30からプログラムが始まります。
潮風の香りを楽しみながら、海の見える広場でヨガやストレッチ。
眠っていた体をゆっくりとほぐした後は、浜辺のゴミを拾ってビーチクリーンをしました。
遠くから見ると自然豊かな印象を受けますが、海に近づくとゴミがちらほら。潮の流れの関係で、海に漂うゴミが流れ着くのだとか。
ワーケーションは、地域の魅力なくして実現できないものなので、環境問題についても考えさせられます。
ビーチクリーンを終えて宿に戻ると、お弁当が届いていました。
2種類のおにぎりをはじめ、イチジクや地野菜が綺麗に盛られ、朝にぴったりの食べやすさ。
この日はシマトワークスが関わっている農場へ行く予定もありますが、朝食に使われていた野菜から伏線が張られていたのかもしれません……。
宿から車で移動し、到着したのは「farm studio」。大阪湾が一望できる絶好のスポットです。
farm studioの担い手の一人であり、いちご農家とジャム屋さんを兼業している山田屋さんにお話を伺いました。
簡単に説明すると、このfarm studioでは耕作放棄地を使って新たな可能性を模索しています。お客さんが10平米ほどの農園を持てる仕組みを作ったり、敷地の一角を使って養蜂に取り組んだりと、その内容は多岐に渡ります。
また、雑草の生い茂る耕作放棄地を元の姿に戻すため、牛の力を借りているのも斬新です。
山田屋さんによると、人間の手で整備するのは困難でも「牛に雑草を食べてもらうことで、効率よく土地を整えられるんです」とのこと。
放牧することで牛のストレス発散にもなり、WIN-WINの関係ができているようです。
落花生の収穫や耕作・種まきの体験もさせていただきました。
ダイコンやニンジン、シュンギクといった野菜の中から自分が好きな種を選び、植えていきます。
淡路島から離れても、担い手の方たちが作物を育ててくれるため、収穫時期に再び淡路島を訪ねるのも楽しみです。
農業体験後は、farm studioで採れたハーブを使ったジュースでひと休み。
ハーブと蜂蜜を入れて炭酸で割るだけの手軽なジュースですが、ハーブの香りで爽やかな味わいに仕上がりました。
そして、昼食はレモングラス鶏飯をいただきました。料理を作っていただいたのは、no.24の藤田祥子さんで、この日のランチと翌日の朝ごはんも作られたようです。
しかも、ただの料理人ではなく、コピーライターとしても活躍されているとか。
じっくりと煮込んだ鶏肉の旨味と、レモングラスと一緒に炊いた白米の風味が絶妙にマッチ。途中でスダチなどを加えて味変も楽しめました。
昼食を終えて休憩したあとは、宿泊施設のエトワール生石へ帰ります。
farm studioでの滞在が当初の予定よりオーバーしていましたが、焦ることなくゆっくりと行動できるのもリトリートならではの過ごし方なのかもしれません。
宿に戻って少し休憩を挟んだら、自分の過去を振り返る「内省」を行いました。
内省を担当したのは、合同会社ミラマール代表社員の川人ゆかりさん。
自分の人生を振り返り、モチベーショングラフを作成しますが、それぞれが自分の好きな場所で内省を行うことに。
波の音や山の匂いの中で、自分の過去と向き合います。
モチベーショングラフを作り終えたら、他の参加者と共有します!
「自分のモチベーションはどんな時に上がるのか」を具体的に見られて、今後の働き方や生き方の方向性が見えてきました!
「自分のことを見つめ直す時間」はなかなか取れないものですが、日々の喧騒から離れ、過去の自分や将来の自分について考える時間こそ、私たちに必要なのかもしれませんね。
続いて、本来の予定では「幸福学」の時間ですが、夕食をとることに。
ワーケーション2日目の夕食を作ってくれたのは、淡路島のゲストハウス花野の中にある「食のわ」で料理人をしている神瀬聖さん。
地元で採れたオーガニックな食材を使い、見た目にも美味しそうな料理の数々をいただきました。
作っていただいた品数が多すぎて覚えきれませんでしたが、ハーブのサラダやコロッケ、新鮮な魚の焼き物など、全て絶品でした!!!
夕食のあとは、浜辺で火を囲みながら幸福学について語らいました。
ファシリテーションを行ってくれたのが大阪行岡医療大学助教の山野宏章さん。自身の研究や実体験を元に、「幸福とは何か」を学術的な観点から教えていただきました。
幸福学についてざっくり解説すると、人が幸福を感じるには4つの因子が関わっているそうです。
・ありがとう因子
・なんとかなる因子
・あなたらしく因子
・やってみよう因子
これらの因子が長期的な幸福度に関わってくるのだとか。
内省の時間に自分のモチベーションを認識しましたが、幸福学と合わさることで、自分への理解がさらに深まりました。
3日目も早朝のヨガから始まり、ゆっくりと身体を起こしていきます。
もはや日課のようになった海の掃除も、みなさん慣れた手つきで素早く集めていました(笑)。
リトリートの2日目を主に担当されたのが、㈱次世代共創企画の代表取締役である山中 昌幸さん。
長年、教育機会開発に携わっており、数多くの企業や教育機関からも注目が集まる方です。
今回のプログラムを企画したシマトワークスさんが山中さんの武勇伝?を語るほど、面白い人でした(笑)。
この日は「気」について教えていただきましたが、「やる気」「元気」「活気」など、「気」が入る言葉は日本語に数多くあります。
気の体験には、自分の呼吸や人の体に触れることが必要だったため、コロナ対策として消毒や換気を行ってからスタート。
気を集中することで「力を入れなくても肘が曲がらなくなる」など、いくつかのワークを通じ、参加者は「気」が何なのか漠然とでも体感しました。
私も踏ん張ったつもりはありませんが、ペアになった方が肘を曲げようとしても、ほとんど動かなかったのは驚きです。
気を学んだあとは、宿泊施設のすぐ裏手にある山へ。ただ登るだけでなく、自由に歩きながら自分について考える時間です。
頭の中を現実から切り離すため、電子機器を一切持たない「デジタルデトックス」も行います。
山の中を歩き、自然を感じながら「今後の人生で何をしたいのか」を考え続けました。
風に揺られる木々や海から香る潮の匂いなど、都会では味わえない空間が広がるからこそ、自分自身に向き合うことができます。
淡路島の自然を心ゆくまで堪能したあとは、みんなでお弁当をいただきました!
ぱっと見ただけでも作り手の優しさが伝わってくる、こちらのお弁当は「空想燕」さんが届けてくれました。
魚や野菜など地域の食材が丁寧に調理され、味わい深いひと碗です。
自然の香りや音を感じつつ未来を考えるため、ソロの時間ではとにかく右脳を使います。
淡路島の自然に触れたあとは施設に集合し、「今の自分」から「目標を達成した自分」「達成したあとの幸せな自分」などをイメージするワークが開始。
頭の中で具体的にイメージしながら、歩を進めるごとに目標を達成し幸福な未来へと進みます。
何度も繰り返すことで、より鮮明にイメージできるようになりました。
人によって考えもやりたいことも全く異なりますが、将来の理想を絵にすることで、その違いが顕著に現れます。
自分が描いた絵を見せながら、どんな生き方が理想なのか、みんなに発表しました。
家族と過ごす幸せなひと時を描く人がいれば、ハワイでサーフィンを楽しみながら生活する様子を描く人も。
それぞれの発表を聞きながら、「それはいつ実現するのが目標?」など、発表者に対しての質問があったので、理想像がより具体的になっていきます。
この日の夕食も神瀬さんが作ってくれました。
一品一品丁寧に作られ、香り豊かなハーブサラダや食べ応え十分のローストビーフ、さらには特産の玉ねぎを丸ごと使った一品など、大満足の夕食です!
今回のモニターツアーに参加したカメラマンが、夕飯のあとに星を撮りに行っていました。
そのときの一枚がこちら!
夜空に輝く星は、自然豊かな土地でしか味わえない贅沢ですね。
ついに迎えてしまったワーケーション最終日。ヨガやストレッチを終えて、朝食をいただきますが、どこか寂しさが漂います。
上の写真は参加者の仲が悪いわけではなく、コロナ対策です(笑)。
最終日はワーケーションなので、朝食のあとはそれぞれの仕事に集中します。
屋内から海を見渡せる席や、外に椅子を用意して黙々と作業に集中。ネット環境が整っていたので、オンラインでMTGを行う方もいました。
私は普段から土日も働いていましたが、この土日はほとんど仕事をせず、リトリートに専念しました。
「仕事をしないと不安」という気持ちもありましたが、「意外となんとかなる!」と気づけたのは、今の心身の健康につながっている気がします。
4日目のプログラムも終わり、最後は振り返りの時間です。
これまで焦って仕事をしていた私は、この4日間を通して気持ちが楽になったのを実感しています。
目の前のことに集中すること、未来の働き方を考えること、幸福などについて考える時間を持てたのは、貴重な体験でした。
他の参加者も今回のプログラムへ参加したのをきっかけに、多拠点生活を始めたり、自身の運営するゲストハウスでの新しい取り組みを考えたりと、前に進んでいるようです。
シマトワークスさんが主宰したワーケーションのプログラムについて、私の目線から紹介してきましたが、あくまでも魅力的な内容の一部です。
今回のモニターツアーに参加することで、それぞれが自分のやりたいことを見つけ、理想的な未来に進むきっかけを得られたのではないでしょうか。
「何かしたいけど何をすればいいか分からない」「ただ旅行が好き」という方も、ぜひワーケーションに参加して、この魅力を体感してみてください。