レポート REPORT

島をまるごとキャンパス化。
淡路島ゼロイチコンソーシアムと実現する学びのかたち。【第2回】

株式会社ワークアカデミー 松田正浩

第1回に続き、株式会社ワークアカデミーの松田社長に、淡路島ゼロイチコンソーシアムと実現する学びのかたちについて、お話しを伺います。

松田 正浩(まつだ まさひろ)

松田 正浩(まつだ まさひろ)

株式会社ワークアカデミー取締役社長。教える人と学ぶ人がともに学び、ともに悩み、ともに成長していく。お互いがお互いに人生を支援する関係を作り、生涯の「学び」と「新しい出会い」の場づくりを行っている。

第1回の記事はこちら

洲本市に大学を作る?!

ー学生が洲本市というフィールドを活用して学びに繋げる場を作る。そして、学びの先に洲本市の発展していくためには、一過性ではない継続性が必要。ということですが、それには何か枠組みが必要なようにも感じますが・・・

そうですね、学生が洲本市の課題を継続して解決していくためには、大学のようなプラットフォームがあると良いですね。大学を本当に作りたいっていうわけではなくて、大学のような環境の中で、コースとプログラムがあるっていうイメージの方が形にしやすいんじゃないかなと。

で、そこは社会と繋がっていく出口みたいなイメージを持たせておく。そこで身につけた体験なり、気づきを、スキルや教養として身につけられてもいいですし、次の舞台で活かせたらいいですし。いろんな事が考えられるかなって思ってます。

ー社会と繋がるための場、ですか。

そうです。それと、課題が事前に設定されてなくて、学生自身が課題を見つけてコーディネートできるようなフィールドを作りたいですね。

課題を自ら探して、仮説を立てて、提案して実装できるような環境とか。課題を見つけるためのフィールドをちゃんと設定する必要はありますが・・・勝手に田んぼの中に入ったりする、みたいにはならないように、立て付けは考えないといけないですね。

でもそれって、大学の中で行うのは難しくて、実際の現場だからこそできること。もしかしたら、課題がないかもしれないし、想定していた人以外の課題が見つかるかもしれないし。解決できないことも失敗することもいっぱいあるかもしれないけど、そういう体験もひっくるめて、全てが充実した学びになると思います。

ー大学で学んだ方程式を、リアルに感じて体験できる場所を作る・・・深い理解に繋がりそうです。

そうですよね。で、実際に実装して動かしてみて、うまく回らない、じゃあどうすればいいのか考える。もし時間切れになったとしても、次に来た人達がまたそれについて取り組んでいく。その課題が、人の課題であったり、行政にとっての課題であったり、多様だと思いますが、机上の空論じゃなくて、目の前にある課題をクリアして、少しでも誰かにとって良くなるっていう感覚も、継承していければいいのかなと。

もともと大学って研究機関として始まっていて、知識を体系化して継承していくところなんですけど、実際の社会は、他人と切磋琢磨しながら協働したりと、体系的な知識だけではない側面がたくさんある。社会に出る前に、実際の社会に近い場所に身を置くことで、他人と協働するからこその失敗もあったり、自分にない価値観の多様性に触れたりもできます。

ーなるほど。

そして、そういう思いに至ったのは、二つ理由があって。

ひとつは、最近の大学の取り組みです。大学もなるべく社会に出る前に、社会で必要なスキルやコンピテンシーを身につけてほしいと学生向けのカリキュラムを取り入れています。これが”キャリア教育”というものなんですが、そういうのは昔はなかったですよね。

で、もうひとつは、弊社の会長が、大学を卒業したあとヨーロッパに留学していた時の原体験です。ヨーロッパでは、大学以外の場所でも自主的に学んでいる人が多くて、みんな街中で議論をしているんです。昔のソクラテスの話みたいな感じにも聞こえますが、街角で行き交う人に話しかけて、これについてどう思う?みたいなやりとりがあったり。

バーやカフェで若者が議論を交わしている、ヨーロッパではそういう状況が日常的なんだっていうのを会長はよく話しています。なので、大学の中で学んだ体系的な知識を、現実で試したり、街中で議論する場を作ろうと。それをイメージして、学生が集まって挑戦したり活躍できる場を作ろうっていう事で、ハルカス大学やUMEDAIができたんですよね。

そういった都市部のサテライトキャンパスでは、入居施設を管理している企業とタイアップして色々と挑戦できるフィールドを作っています。たとえば、ハルカス大学では、”てんしば”という商業施設を併設した芝生広場にあるゲストハウスの運営を学生にチャレンジさせてもらっていたり。

そういうフィールドのコーディネートも僕らが行っているんですけど、もっともっと増やしていきたいなという思いもあって。都心バージョンのフィールドもあれば、地方の町に根ざしている課題に対して継続的に取り組めるフィールドを作っていきたいですね。地方で起きているリアルな環境問題や社会問題など、市全体の課題に対して取り組めるような場を。

まちそのものが大学のキャンパスに

以前から弊社の会長が“まちまるごとキャンパス”をやりたいと言っていて、それに繋がる発想でチャレンジできるのではという可能性を感じたんです。淡路島ゼロイチコンソーシアムという、その場所をよく知る団体の集まりとなら、一緒に実現していけるんじゃないかと。

ー”まちまるごとキャンパス”、すごくワクワクしますね。その先に考えられていることはありますか?

まち全体がキャンパス化していて、そこではいろんな課題にチャンレジできたり、チャレンジする過程の中で、自分自身のスキルや教養が身についたり、実践力が養われたり。そして、そういう人達が育っていって、例えばその人達が洲本市で起業をしたり、他で活躍したりという循環が生まれる。

で、ダブルスクールで通ってもいいわけですから、社会に出てからも、他のコースを受けたり並行して実践していって、それをまた次の世代に継承していく。洲本市に住まなくても、課題にチャレンジするために洲本市に来る。

ーそこで得た学びを、また自分の事業に生かすということにも繋がりますね。

そうです。なんかこう、日本中の学生が、大学生活の四年間のうち、一度は洲本市に訪れるような。世界中の若い人も。洲本市って食が充実していますし、旅行で訪れる魅力もあるので。そういうコースも作れるといいですね。

ー卒業後も、洲本市との繋がりは切れませんし、確かに大学としての成功というラインはなくて、大学も成長し続けますね。

そうですね、形を変え発展していけばいいんじゃないかなと。

卒業した後も、洲本市での出来事は記憶に残りますし、住まなくても通って滞在するという形での繋がり方があると思います。それが”関係人口”って表現になるのかなと思いますが。

ー確かに。洲本市で得た学びをまた別の地域の課題解決にも活かせるかもしれません。

そうなんですよ。だからこそ、一過性のものじゃなくて、継続して解決する仕組みを作れたら、と思っています。

大学を作って、単位を取ってとか、そういうのじゃなくって。洲本市の課題、自分の課題、いろんなコースがあって、洲本市の魅力をきちんと感じられて。

体系的な学びはオンラインでもできますが、挑戦したり実装したりするのは現場でしかできないと思っているので、学んだカリキュラムを活かして挑戦するために来る、というのもいいですしね。

繰り返しになりますが、コンソーシアムに期待しているのは現場機能の実装、で、その本質が継承することだと思っています。

洲本市の発展って言うと、何目線なんだってなるかもしれませんけど、洲本市の人々が良くなっているという感覚がないと意味がなくて。あくまでも主体なのは、淡路島にいる市民や事業者だと思うんです。

ー確かに、そうですね。

また僕とは別のメンバーに聞いてもらうと、違う意見を話すと思います。僕もまた、明日聞かれたら違うことを言ってるかも。(笑)毎日思考はリフレッシュしていきますしね。それも学びです。


お話しを伺っているとワクワクして、とっても良い時間となりました。松田さん、ありがとうございました。これからよろしくお願いします!