島をまるごとキャンパス化。
淡路島ゼロイチコンソーシアムと実現する学びのかたち。【第2回】

第1回の記事はこちら

洲本市に大学を作る?!

ー学生が洲本市というフィールドを活用して学びに繋げる場を作る。そして、学びの先に洲本市の発展していくためには、一過性ではない継続性が必要。ということですが、それには何か枠組みが必要なようにも感じますが・・・

そうですね、学生が洲本市の課題を継続して解決していくためには、大学のようなプラットフォームがあると良いですね。大学を本当に作りたいっていうわけではなくて、大学のような環境の中で、コースとプログラムがあるっていうイメージの方が形にしやすいんじゃないかなと。

で、そこは社会と繋がっていく出口みたいなイメージを持たせておく。そこで身につけた体験なり、気づきを、スキルや教養として身につけられてもいいですし、次の舞台で活かせたらいいですし。いろんな事が考えられるかなって思ってます。

ー社会と繋がるための場、ですか。

そうです。それと、課題が事前に設定されてなくて、学生自身が課題を見つけてコーディネートできるようなフィールドを作りたいですね。

課題を自ら探して、仮説を立てて、提案して実装できるような環境とか。課題を見つけるためのフィールドをちゃんと設定する必要はありますが・・・勝手に田んぼの中に入ったりする、みたいにはならないように、立て付けは考えないといけないですね。

でもそれって、大学の中で行うのは難しくて、実際の現場だからこそできること。もしかしたら、課題がないかもしれないし、想定していた人以外の課題が見つかるかもしれないし。解決できないことも失敗することもいっぱいあるかもしれないけど、そういう体験もひっくるめて、全てが充実した学びになると思います。

ー大学で学んだ方程式を、リアルに感じて体験できる場所を作る・・・深い理解に繋がりそうです。

そうですよね。で、実際に実装して動かしてみて、うまく回らない、じゃあどうすればいいのか考える。もし時間切れになったとしても、次に来た人達がまたそれについて取り組んでいく。その課題が、人の課題であったり、行政にとっての課題であったり、多様だと思いますが、机上の空論じゃなくて、目の前にある課題をクリアして、少しでも誰かにとって良くなるっていう感覚も、継承していければいいのかなと。

もともと大学って研究機関として始まっていて、知識を体系化して継承していくところなんですけど、実際の社会は、他人と切磋琢磨しながら協働したりと、体系的な知識だけではない側面がたくさんある。社会に出る前に、実際の社会に近い場所に身を置くことで、他人と協働するからこその失敗もあったり、自分にない価値観の多様性に触れたりもできます。

ーなるほど。

そして、そういう思いに至ったのは、二つ理由があって。

ひとつは、最近の大学の取り組みです。大学もなるべく社会に出る前に、社会で必要なスキルやコンピテンシーを身につけてほしいと学生向けのカリキュラムを取り入れています。これが”キャリア教育”というものなんですが、そういうのは昔はなかったですよね。

で、もうひとつは、弊社の会長が、大学を卒業したあとヨーロッパに留学していた時の原体験です。ヨーロッパでは、大学以外の場所でも自主的に学んでいる人が多くて、みんな街中で議論をしているんです。昔のソクラテスの話みたいな感じにも聞こえますが、街角で行き交う人に話しかけて、これについてどう思う?みたいなやりとりがあったり。

バーやカフェで若者が議論を交わしている、ヨーロッパではそういう状況が日常的なんだっていうのを会長はよく話しています。なので、大学の中で学んだ体系的な知識を、現実で試したり、街中で議論する場を作ろうと。それをイメージして、学生が集まって挑戦したり活躍できる場を作ろうっていう事で、ハルカス大学やUMEDAIができたんですよね。

そういった都市部のサテライトキャンパスでは、入居施設を管理している企業とタイアップして色々と挑戦できるフィールドを作っています。たとえば、ハルカス大学では、”てんしば”という商業施設を併設した芝生広場にあるゲストハウスの運営を学生にチャレンジさせてもらっていたり。

そういうフィールドのコーディネートも僕らが行っているんですけど、もっともっと増やしていきたいなという思いもあって。都心バージョンのフィールドもあれば、地方の町に根ざしている課題に対して継続的に取り組めるフィールドを作っていきたいですね。地方で起きているリアルな環境問題や社会問題など、市全体の課題に対して取り組めるような場を。

まちそのものが大学のキャンパスに

以前から弊社の会長が“まちまるごとキャンパス”をやりたいと言っていて、それに繋がる発想でチャレンジできるのではという可能性を感じたんです。淡路島ゼロイチコンソーシアムという、その場所をよく知る団体の集まりとなら、一緒に実現していけるんじゃないかと。

ー”まちまるごとキャンパス”、すごくワクワクしますね。その先に考えられていることはありますか?

まち全体がキャンパス化していて、そこではいろんな課題にチャンレジできたり、チャレンジする過程の中で、自分自身のスキルや教養が身についたり、実践力が養われたり。そして、そういう人達が育っていって、例えばその人達が洲本市で起業をしたり、他で活躍したりという循環が生まれる。

で、ダブルスクールで通ってもいいわけですから、社会に出てからも、他のコースを受けたり並行して実践していって、それをまた次の世代に継承していく。洲本市に住まなくても、課題にチャレンジするために洲本市に来る。

ーそこで得た学びを、また自分の事業に生かすということにも繋がりますね。

そうです。なんかこう、日本中の学生が、大学生活の四年間のうち、一度は洲本市に訪れるような。世界中の若い人も。洲本市って食が充実していますし、旅行で訪れる魅力もあるので。そういうコースも作れるといいですね。

ー卒業後も、洲本市との繋がりは切れませんし、確かに大学としての成功というラインはなくて、大学も成長し続けますね。

そうですね、形を変え発展していけばいいんじゃないかなと。

卒業した後も、洲本市での出来事は記憶に残りますし、住まなくても通って滞在するという形での繋がり方があると思います。それが”関係人口”って表現になるのかなと思いますが。

ー確かに。洲本市で得た学びをまた別の地域の課題解決にも活かせるかもしれません。

そうなんですよ。だからこそ、一過性のものじゃなくて、継続して解決する仕組みを作れたら、と思っています。

大学を作って、単位を取ってとか、そういうのじゃなくって。洲本市の課題、自分の課題、いろんなコースがあって、洲本市の魅力をきちんと感じられて。

体系的な学びはオンラインでもできますが、挑戦したり実装したりするのは現場でしかできないと思っているので、学んだカリキュラムを活かして挑戦するために来る、というのもいいですしね。

繰り返しになりますが、コンソーシアムに期待しているのは現場機能の実装、で、その本質が継承することだと思っています。

洲本市の発展って言うと、何目線なんだってなるかもしれませんけど、洲本市の人々が良くなっているという感覚がないと意味がなくて。あくまでも主体なのは、淡路島にいる市民や事業者だと思うんです。

ー確かに、そうですね。

また僕とは別のメンバーに聞いてもらうと、違う意見を話すと思います。僕もまた、明日聞かれたら違うことを言ってるかも。(笑)毎日思考はリフレッシュしていきますしね。それも学びです。


お話しを伺っているとワクワクして、とっても良い時間となりました。松田さん、ありがとうございました。これからよろしくお願いします!

島をまるごとキャンパス化。
淡路島ゼロイチコンソーシアムと実現する学びのかたち。【第1回】

洲本市との出会い

“淡路島ゼロイチコンソーシアム”のことを知ったのは今年に入ってからなんですが、以前より洲本市で学生向けの課外活動を行っていました。ですので、洲本市とのつながりは以前からありました。

僕らは、大学と一緒に大学授業のカリキュラムを組み立てたり、大学に所属している学生が、大学の授業で得た知識を活かして実践的に学べるように、大学の授業以外で課外授業を通して学ぶ場をつくる、といった事業を展開しています。大学と一緒に、というと少しヘンな言い方に聞こえるかもしれませんが、学生が大学を卒業して社会に出た時に、より活躍できるようなサポートをしています。

ー実践的に学ぶとはどういうことでしょうか?

より社会に近い現場で学習活動を通じて体感することが、実践的に学ぶということです。大学の授業は、知識やスキルを習得することができるアカデミックな場ですが、それをそのまま社会で活かせるかというと少し繋げにくい側面があります。ですので、大学での体系的な知識の習得と並行して、課外活動での体感を通してより学びを深める場を作り、チャレンジする学生を支えたいという想いを持っています。

大阪天王寺の”ハルカス大学”や、大阪梅田の”UMEDAI”といった都心部でのサテライトキャンパスも、そういった文脈の中で出来上がりました。

そして、そのサテライトキャンパスのイベントや大学カリキュラムのPBL(課題解決型学習)を実施している中で、シマトワークスの富田さんと出会いました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

洲本市でPBL(課題解決型学習)をするのはなぜ?

わたしたちは大阪を拠点にしているんですが、淡路島って大阪からも近くて、本州にはない魅力がたくさんあると感じています。気候が良くて、食べ物が美味しくて、温泉があって、のびのびできて、そして人も良くて。

関西の大学にとっても、淡路島は行き来しやすいので、大学とは違った環境で、学生がちょっと緊張感を持ちながら学習できるというのが、課外学習の舞台としてはちょうど良いと感じています。それと、洲本市は域学連携を推進されていますよね。そういった洲本市が発信しているメッセージを大学が受け取っているということも、あるのではないかと思います。

ーもともと淡路島で事業を展開されている中で、コンソーシアムに参画しようと決めたのはなぜでしょうか?

洲本市に関わる人たちを支えるような役目を担える、と感じたからですかね。淡路島ゼロイチコンソーシアムは、洲本市に拠点を持ち、なおかつジャンルの違った機能を持ち合わせた団体が集まっているので、一緒に取り組むことで、今よりさらに多くの人たちに、学びの場を作ったり、充実感を持ってもらえるようなプログラムを提供できるんじゃないかな、と。現地のことをよく知る団体と一緒に取り組むことで、その場所で、地元住民や企業にどんなメリットが出せるのか、どんな貢献ができるのか。という視点を持って参加し課題を見つけられる方が、よりぎゅっと充実した学びになると思います。

町、場所が中心。そこに住む人達が中心人物。

たとえば、インターンやPBLといった枠組みで、団体が来て、一定期間滞在して、また帰っていく。で、また別の団体が来て、また同じことをして、帰っていく。それだと、毎回ゼロに戻ってしまっていて、洲本市にとってのメリットはなかなか生み出しにくい。そうじゃなくて、やり残した事や課題を整えて、次の団体に引き継いで解決していくことが、街の発展や貢献につながると思います。

ぼくらのようなひとつの企業が大阪から行き来しながらだと、課題を継続して解決していく仕組み作りが少し難しいと感じている部分もあって。その点、洲本市に拠点を置いていたり、住んでいたりと、洲本市にベースがある企業や団体と一緒に進めていけるというのは強みだと思うんです。

ー地元密着な企業だからこそ、継続していける土台作りがしやすいということですね。

そうですね。僕らは、学校の先生や学生を洲本市に繋げることで関係人口を増やすことはできても、洲本市の住民を増やす事は直接的には難しい。学生に洲本市に住んだら?とは言えないですし(笑)。

僕らがいちいち来て、色々掘り起こして課題を見つけるのも、外から祭り持ってきてやろうぜって言って、結局ゴミばかり残して荒らしてるだけやんっていう感覚と似ていて、ちょっとおかしいですよね。

洲本市というフィールドを活用して学びに繋げる、ということが前提になるので、町、場所が中心ですし、そこの人達が中心人物じゃないと。そのために、継続して課題を解決する、その実行的な機能を実現できるような団体になれればいいなと思っています。

ー洲本市が中心人物、それを支えるコンソーシアムという立ち位置ですね。

もちろん、学生の成長や将来的な活躍を目指して活動させてもらいながらですが、洲本市の企業や住民のみなさんが洲本市が良くなったと感じてもらえるように。

コンソーシアムには、そういった洲本市の発展につながることを、継続的に実施していける仕組みを一緒に作っていくというのを、期待しています。(第2回に続く)


今回はここまで!

次回は、洲本市のまちをまるごとキャンパス化するという構想について、お話を伺っていきます。