淡路島クエストカレッジのプレ企画 ”第2のふるさとづくりワークショップ”を実施しました。

淡路島クエストカレッジについて

淡路島ゼロイチコンソーシアムが立ち上げた、自身の人生観や仕事観を知りたい、見直したいと考える若者が「冒険人」となり、淡路島・洲本市の持つ地域資源の利活用や、地元企業が抱える課題に挑戦する機会を通して、将来について考える学びの場です。プログラムを通して、継続的に島と関わり続けることで、交流人口・関係人口の増加や地域活性化に繋げる事が目的です。また、淡路島での経験を経て、自身の人生に主体的になり冒険し続ける若者を増やします。2023年4月より開校。

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株式会社ワークアカデミーと株式会社ODKソリューションズとの協働で実現したこの企画。10名弱の募集人数に対して、4倍近い全国の学生さんからご応募いただきました。

今回のワークショップの目的

今回のワークショップは、「地域の取り組みをプログラム化すること」と「NFT技術を用いたふるさとパスポートの実証実験」の2点を主な目的として実施しました。

  • ワークショップを通じて、自治体関係者や地域おこし協力隊、地域の方々と直接接しながら、地域活性化の取り組み内容について知る。
  • 限界集落である洲本市千草竹原地区で、空き家を地域拠点に変えるプロジェクトに参加。空き家の改修体験を通して、プロジェクト推進の一角を担う体験をする。
  • 株式会社ODKソリューションズが推進している”ふるさとパスポート”の実証実験を体験し、オンライン/オフラインでの関係人口づくり、アイデア出しに参加する。

今回のスケジュールとレポート

2023/2/14 事前学習会(オンライン)

約1時間半のオンライン学習会を実施。

参加者同士の自己紹介と、洲本市について、今回ワークショップの舞台となる洲本市千草竹原地区について、洲本市役所の高橋さんと洲本市地域おこし協力隊の小林さんに話を聞き、訪問前に現地についての理解を深めました。

また、今回株式会社ODKソリューションズが推進する、NFT技術を用いた”ふるさとパスポート”についてレクチャーを受け、不明点などを事前に確認しました。

2023/2/24〜2/26 現地でのワークショップ

初日は、午前に洲本バスセンター前にて集合。Workation hub 紺屋町にて、導入ワークを実施。

自己紹介を通してコミュニケーションを取ったり、今回のワークショップを通して、今回どんな”冒険”をしたいか?について少し考えていただきました。全員初対面なので、少し緊張した面持ちでスタート。

自己紹介ワークの様子

午後は、いよいよ千草竹原地区に移動。同地区の空き家を住民の交流拠点や学生の宿泊拠点に改修をするプロジェクトを推進している、洲本市地域おこし協力隊の小林さんと、同地域で活動する住民の方に先導いただきながら、周辺を散策します。

千草竹原地区は、人口が6人の限界集落と呼ばれる地域。人より鹿が多いそう。周辺は山で囲まれ、自然が豊かな場所です。そして、洲本市役所の高橋さんが域学連携に関わり、10年近く関西圏の大学生を受け入れ、地域活性化に取り組んできた地域です。古民家の周辺には、住民の手によってあじさい園ができたり、移住者によりレストランや椎茸栽培園ができたりと、10年の間に、変化が次々と起きています。

手作りのあじさい園”あわじ花山水”を運営する水田さんは「もっとこの地域に人が来てほしい、ただそれだけの気持ちであじさい園を作り続けた。今こうやって色んな人が関わってくれるようになって、本当に嬉しい。」と語っていました。直接、地域の人から話を聞き、理解を深めます。

その後、古民家の改修作業に移ります。今回は3日間で、内装の漆喰塗りと外壁の修復を行いました。小林さんから指示を受けながら、初日は、漆喰を塗る場所に下地を塗ったり、養生テープを貼ったりと、翌日の下準備を行いました。

2日目は、いよいよ漆喰を塗ります。淡路市の壁材メーカーである、近畿壁材の濱岡社長から直々にレクチャーを受け、挑戦。みなさん最初はおそるおそる慎重に塗っていましたが、2日目が終わりに近づく頃には、驚異的なスピードに。

漆喰塗り作業の合間には、一斗缶を使った即席ストーブを全員で囲みながら、古民家の近くにあるレストラン、ÉPiSPa(エピスパ)さん特製弁当を食べたりと、非日常な時間も過ごしました。

最終日は、午前に外壁の修復作業を行い、改修作業は終了。昼食を兼ねて、洲本市街地の協力店舗でふるさとパスポートを見せて食事をする、というNFT技術を用いたふるさとパスポートを体験しました。

今回実験に協力して下さった、洲本市街地の商店街でお好み焼き屋を経営しているタニガワさんに後日話を聞きに伺ったところ、「こうやって若い人がお店に訪れてくれて、話ができて、とても良い機会だった。また実施するなら、次もぜひ協力するよ。」と仰って頂きました。

最後にWorkation hub 紺屋町に戻って、3日間のワークショップの振り返りを行います。神戸新聞や淡路島テレビジョンの記者の方々も取材に来て下さいました。

『ワークを通して感じたことや、今後に活かしたいことは?』という問いに対して、「直接話を聞いたり、改修作業を通して、自分も集落の活性化に繋がる大きなプロジェクトの一角を担うことができたと感じた。」という声や、「地域をもっと盛り上げたいと積極的に活動する姿を近くで見て、自分も地元の地域活性に取り組む第一人者になりたいと思った。」や、「まちづくりや地域活性に関わる仕事に興味を持ったので、仕事をする選択肢のひとつにしたい。」といった感想が上がりました。

また、『今回のワークでどんな”冒険”をしましたか?』という問いに対しては、「人見知りで人と話すことが苦手で、この3日間はとにかく人と話そう、気になったことは質問しようと思いながら過ごした。結果、一緒にワークショップをした仲間や関係者とたくさん話すことができて良かった。」や、「与えられる作業だけではなく、自分から積極的に動くことを意識して行動した。」といった感想も。

淡路島クエストカレッジが狙いとする”働く・生きるに対する視野を広げる”を感じたと語る学生さんが多く、プログラムへの手応えも感じました。

今回は3日間という短い期間のプログラムでしたが、初めて行く地域に飛び込み、初めて出会う仲間と一緒に過ごして、地域を変えていく現場を、直接見て、話を聞き、活動の一角を担うという実体験は、普段の学校生活では体験できない、冒険となりました。

「第4回純国産メンマサミットin淡路島」に、淡路島ゼロイチコンソーシアムが登壇しました。

“竹の新しい利活用を考える”をテーマに、全国から200名を超える参加者を集めた「第4回純国産メンマサミット」が2022年11月26日に開催されました。

今回、淡路島ゼロイチコンソーシアムの参画企業である株式会社日建ハウジングシステムの前田氏と、コンソーシアム事務局を務めるシマトワークスの富田が、座談会に登壇いたしました。

動画はこちら。

また、本イベントに合わせて、(株)日建ハウジングシステムが、同グループ会社の(株)日建設計のNikken Wood Labチームとも協働し、イベント時の舞台演出や竹を使ったアイテムのデザインを行いました。

その様子はこちら。

島をまるごとキャンパス化。
淡路島ゼロイチコンソーシアムと実現する学びのかたち。【第2回】

第1回の記事はこちら

洲本市に大学を作る?!

ー学生が洲本市というフィールドを活用して学びに繋げる場を作る。そして、学びの先に洲本市の発展していくためには、一過性ではない継続性が必要。ということですが、それには何か枠組みが必要なようにも感じますが・・・

そうですね、学生が洲本市の課題を継続して解決していくためには、大学のようなプラットフォームがあると良いですね。大学を本当に作りたいっていうわけではなくて、大学のような環境の中で、コースとプログラムがあるっていうイメージの方が形にしやすいんじゃないかなと。

で、そこは社会と繋がっていく出口みたいなイメージを持たせておく。そこで身につけた体験なり、気づきを、スキルや教養として身につけられてもいいですし、次の舞台で活かせたらいいですし。いろんな事が考えられるかなって思ってます。

ー社会と繋がるための場、ですか。

そうです。それと、課題が事前に設定されてなくて、学生自身が課題を見つけてコーディネートできるようなフィールドを作りたいですね。

課題を自ら探して、仮説を立てて、提案して実装できるような環境とか。課題を見つけるためのフィールドをちゃんと設定する必要はありますが・・・勝手に田んぼの中に入ったりする、みたいにはならないように、立て付けは考えないといけないですね。

でもそれって、大学の中で行うのは難しくて、実際の現場だからこそできること。もしかしたら、課題がないかもしれないし、想定していた人以外の課題が見つかるかもしれないし。解決できないことも失敗することもいっぱいあるかもしれないけど、そういう体験もひっくるめて、全てが充実した学びになると思います。

ー大学で学んだ方程式を、リアルに感じて体験できる場所を作る・・・深い理解に繋がりそうです。

そうですよね。で、実際に実装して動かしてみて、うまく回らない、じゃあどうすればいいのか考える。もし時間切れになったとしても、次に来た人達がまたそれについて取り組んでいく。その課題が、人の課題であったり、行政にとっての課題であったり、多様だと思いますが、机上の空論じゃなくて、目の前にある課題をクリアして、少しでも誰かにとって良くなるっていう感覚も、継承していければいいのかなと。

もともと大学って研究機関として始まっていて、知識を体系化して継承していくところなんですけど、実際の社会は、他人と切磋琢磨しながら協働したりと、体系的な知識だけではない側面がたくさんある。社会に出る前に、実際の社会に近い場所に身を置くことで、他人と協働するからこその失敗もあったり、自分にない価値観の多様性に触れたりもできます。

ーなるほど。

そして、そういう思いに至ったのは、二つ理由があって。

ひとつは、最近の大学の取り組みです。大学もなるべく社会に出る前に、社会で必要なスキルやコンピテンシーを身につけてほしいと学生向けのカリキュラムを取り入れています。これが”キャリア教育”というものなんですが、そういうのは昔はなかったですよね。

で、もうひとつは、弊社の会長が、大学を卒業したあとヨーロッパに留学していた時の原体験です。ヨーロッパでは、大学以外の場所でも自主的に学んでいる人が多くて、みんな街中で議論をしているんです。昔のソクラテスの話みたいな感じにも聞こえますが、街角で行き交う人に話しかけて、これについてどう思う?みたいなやりとりがあったり。

バーやカフェで若者が議論を交わしている、ヨーロッパではそういう状況が日常的なんだっていうのを会長はよく話しています。なので、大学の中で学んだ体系的な知識を、現実で試したり、街中で議論する場を作ろうと。それをイメージして、学生が集まって挑戦したり活躍できる場を作ろうっていう事で、ハルカス大学やUMEDAIができたんですよね。

そういった都市部のサテライトキャンパスでは、入居施設を管理している企業とタイアップして色々と挑戦できるフィールドを作っています。たとえば、ハルカス大学では、”てんしば”という商業施設を併設した芝生広場にあるゲストハウスの運営を学生にチャレンジさせてもらっていたり。

そういうフィールドのコーディネートも僕らが行っているんですけど、もっともっと増やしていきたいなという思いもあって。都心バージョンのフィールドもあれば、地方の町に根ざしている課題に対して継続的に取り組めるフィールドを作っていきたいですね。地方で起きているリアルな環境問題や社会問題など、市全体の課題に対して取り組めるような場を。

まちそのものが大学のキャンパスに

以前から弊社の会長が“まちまるごとキャンパス”をやりたいと言っていて、それに繋がる発想でチャレンジできるのではという可能性を感じたんです。淡路島ゼロイチコンソーシアムという、その場所をよく知る団体の集まりとなら、一緒に実現していけるんじゃないかと。

ー”まちまるごとキャンパス”、すごくワクワクしますね。その先に考えられていることはありますか?

まち全体がキャンパス化していて、そこではいろんな課題にチャンレジできたり、チャレンジする過程の中で、自分自身のスキルや教養が身についたり、実践力が養われたり。そして、そういう人達が育っていって、例えばその人達が洲本市で起業をしたり、他で活躍したりという循環が生まれる。

で、ダブルスクールで通ってもいいわけですから、社会に出てからも、他のコースを受けたり並行して実践していって、それをまた次の世代に継承していく。洲本市に住まなくても、課題にチャレンジするために洲本市に来る。

ーそこで得た学びを、また自分の事業に生かすということにも繋がりますね。

そうです。なんかこう、日本中の学生が、大学生活の四年間のうち、一度は洲本市に訪れるような。世界中の若い人も。洲本市って食が充実していますし、旅行で訪れる魅力もあるので。そういうコースも作れるといいですね。

ー卒業後も、洲本市との繋がりは切れませんし、確かに大学としての成功というラインはなくて、大学も成長し続けますね。

そうですね、形を変え発展していけばいいんじゃないかなと。

卒業した後も、洲本市での出来事は記憶に残りますし、住まなくても通って滞在するという形での繋がり方があると思います。それが”関係人口”って表現になるのかなと思いますが。

ー確かに。洲本市で得た学びをまた別の地域の課題解決にも活かせるかもしれません。

そうなんですよ。だからこそ、一過性のものじゃなくて、継続して解決する仕組みを作れたら、と思っています。

大学を作って、単位を取ってとか、そういうのじゃなくって。洲本市の課題、自分の課題、いろんなコースがあって、洲本市の魅力をきちんと感じられて。

体系的な学びはオンラインでもできますが、挑戦したり実装したりするのは現場でしかできないと思っているので、学んだカリキュラムを活かして挑戦するために来る、というのもいいですしね。

繰り返しになりますが、コンソーシアムに期待しているのは現場機能の実装、で、その本質が継承することだと思っています。

洲本市の発展って言うと、何目線なんだってなるかもしれませんけど、洲本市の人々が良くなっているという感覚がないと意味がなくて。あくまでも主体なのは、淡路島にいる市民や事業者だと思うんです。

ー確かに、そうですね。

また僕とは別のメンバーに聞いてもらうと、違う意見を話すと思います。僕もまた、明日聞かれたら違うことを言ってるかも。(笑)毎日思考はリフレッシュしていきますしね。それも学びです。


お話しを伺っているとワクワクして、とっても良い時間となりました。松田さん、ありがとうございました。これからよろしくお願いします!

島をまるごとキャンパス化。
淡路島ゼロイチコンソーシアムと実現する学びのかたち。【第1回】

洲本市との出会い

“淡路島ゼロイチコンソーシアム”のことを知ったのは今年に入ってからなんですが、以前より洲本市で学生向けの課外活動を行っていました。ですので、洲本市とのつながりは以前からありました。

僕らは、大学と一緒に大学授業のカリキュラムを組み立てたり、大学に所属している学生が、大学の授業で得た知識を活かして実践的に学べるように、大学の授業以外で課外授業を通して学ぶ場をつくる、といった事業を展開しています。大学と一緒に、というと少しヘンな言い方に聞こえるかもしれませんが、学生が大学を卒業して社会に出た時に、より活躍できるようなサポートをしています。

ー実践的に学ぶとはどういうことでしょうか?

より社会に近い現場で学習活動を通じて体感することが、実践的に学ぶということです。大学の授業は、知識やスキルを習得することができるアカデミックな場ですが、それをそのまま社会で活かせるかというと少し繋げにくい側面があります。ですので、大学での体系的な知識の習得と並行して、課外活動での体感を通してより学びを深める場を作り、チャレンジする学生を支えたいという想いを持っています。

大阪天王寺の”ハルカス大学”や、大阪梅田の”UMEDAI”といった都心部でのサテライトキャンパスも、そういった文脈の中で出来上がりました。

そして、そのサテライトキャンパスのイベントや大学カリキュラムのPBL(課題解決型学習)を実施している中で、シマトワークスの富田さんと出会いました。

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洲本市でPBL(課題解決型学習)をするのはなぜ?

わたしたちは大阪を拠点にしているんですが、淡路島って大阪からも近くて、本州にはない魅力がたくさんあると感じています。気候が良くて、食べ物が美味しくて、温泉があって、のびのびできて、そして人も良くて。

関西の大学にとっても、淡路島は行き来しやすいので、大学とは違った環境で、学生がちょっと緊張感を持ちながら学習できるというのが、課外学習の舞台としてはちょうど良いと感じています。それと、洲本市は域学連携を推進されていますよね。そういった洲本市が発信しているメッセージを大学が受け取っているということも、あるのではないかと思います。

ーもともと淡路島で事業を展開されている中で、コンソーシアムに参画しようと決めたのはなぜでしょうか?

洲本市に関わる人たちを支えるような役目を担える、と感じたからですかね。淡路島ゼロイチコンソーシアムは、洲本市に拠点を持ち、なおかつジャンルの違った機能を持ち合わせた団体が集まっているので、一緒に取り組むことで、今よりさらに多くの人たちに、学びの場を作ったり、充実感を持ってもらえるようなプログラムを提供できるんじゃないかな、と。現地のことをよく知る団体と一緒に取り組むことで、その場所で、地元住民や企業にどんなメリットが出せるのか、どんな貢献ができるのか。という視点を持って参加し課題を見つけられる方が、よりぎゅっと充実した学びになると思います。

町、場所が中心。そこに住む人達が中心人物。

たとえば、インターンやPBLといった枠組みで、団体が来て、一定期間滞在して、また帰っていく。で、また別の団体が来て、また同じことをして、帰っていく。それだと、毎回ゼロに戻ってしまっていて、洲本市にとってのメリットはなかなか生み出しにくい。そうじゃなくて、やり残した事や課題を整えて、次の団体に引き継いで解決していくことが、街の発展や貢献につながると思います。

ぼくらのようなひとつの企業が大阪から行き来しながらだと、課題を継続して解決していく仕組み作りが少し難しいと感じている部分もあって。その点、洲本市に拠点を置いていたり、住んでいたりと、洲本市にベースがある企業や団体と一緒に進めていけるというのは強みだと思うんです。

ー地元密着な企業だからこそ、継続していける土台作りがしやすいということですね。

そうですね。僕らは、学校の先生や学生を洲本市に繋げることで関係人口を増やすことはできても、洲本市の住民を増やす事は直接的には難しい。学生に洲本市に住んだら?とは言えないですし(笑)。

僕らがいちいち来て、色々掘り起こして課題を見つけるのも、外から祭り持ってきてやろうぜって言って、結局ゴミばかり残して荒らしてるだけやんっていう感覚と似ていて、ちょっとおかしいですよね。

洲本市というフィールドを活用して学びに繋げる、ということが前提になるので、町、場所が中心ですし、そこの人達が中心人物じゃないと。そのために、継続して課題を解決する、その実行的な機能を実現できるような団体になれればいいなと思っています。

ー洲本市が中心人物、それを支えるコンソーシアムという立ち位置ですね。

もちろん、学生の成長や将来的な活躍を目指して活動させてもらいながらですが、洲本市の企業や住民のみなさんが洲本市が良くなったと感じてもらえるように。

コンソーシアムには、そういった洲本市の発展につながることを、継続的に実施していける仕組みを一緒に作っていくというのを、期待しています。(第2回に続く)


今回はここまで!

次回は、洲本市のまちをまるごとキャンパス化するという構想について、お話を伺っていきます。

洲本を、もっとおもろく。
おもろい事業者さん待ってます!

より豊かな人の流れが生まれそう。

高橋さん 全国各地、どの地方も人口減少による課題を抱えていると思うんですが、洲本市でも年間500人ずつ人口が減っています。高齢化率は上がる一方、若者は減っていて、空き家が増えたり、商店街では空き店舗が増えたり、里山の管理ができなくなったりして、少しずつ地域が廃れていく。そうした地域課題と向き合いながらも、私が意識しているのは「いいところを伸ばす」ことなんです。例えば、「田んぼの風景がきれいだね」とか「人がいいよね」とか。課題だけでなく魅力に光を当てれば、関係人口の幅も広がると考えています。

前川さん 私も同じ考えですね。これまでは域学連携を通して、学生さんが独自の視点で洲本のいいところを見つけてくれて、私たちにとっても、地域の方にとっても新鮮で刺激を受けていたんです。農家さんも、普段は話さないようなことを学生さんに伝えていて、「お米送ろうか」なんてやりとりも。それもすごく関係人口に影響していると思うんですが、今回「シマトワークス」の富田さんからコンソーシアム立ち上げのお話を聞いて、さらにいろんな人の流れをつくれそうだなと思いました。


高橋さん 富田さんから話を聞いて、「やりましょう!」って一瞬で言いましたよ。学生さんだけでなく、突破力のある企業さんとも組んでいくことって、域学連携の発展形だと思うので。特に、シマトワークスさんが運営している「Workation Hub 紺屋町」に入居されている事業者さんはじめ、都市部の企業さんと一緒に、洲本の人や文化にふれながらプロジェクトをおこしたり課題にアプローチできたりすることって、非常に意義のある取り組みだと思いました。

地域と外部人材をつなぐ。

前川さん 企業さんをはじめ、外部人材が地域で新しいことを始めようとすると、地元の人たちから不安の声をいただくことも考えられます。それだけ、昔から地域や人の結びつきが強い証拠だと思うのですが、私たち行政があいだに入ることで、「市が認めているなら大丈夫か」と安心してもらえたり、信頼してもらえるんじゃないかと思います。

高橋さん 私は特に、域学連携事業を通して地元の事業者さんや団体さんとのつながりを築いてきたので、「こんなことをしたい」と企業さんの要望や想いを聞かせていただければ、それにマッチする人や地域をご紹介できます。洲本の地域や人をよく知っているという面でも、私たち行政の強みを発揮できそうです。

前川さん ただ紹介して終わりではなく、その後も継続してプロジェクトに伴走します。困りごとがあれば何でも相談してもらいたいですし、オフ会にも行くので(笑)。行政って何となくカタいイメージがあると思うのですが、事業パートナーとして気軽に頼っていただけたら嬉しいです。

高橋さん シマトワークスの富田さんとは、事業のことや洲本の未来について、いつも熱く語り合っています(笑)。

洲本に「憧れ」や「誇り」を持つきっかけに。

前川さん 洲本市って、港町なんです。船の往来も盛んで、昔からいろんな文化を受け入れたり、多様な人が行き交っていたりと、このまちの特性として新しいものに興味を持つ人が比較的多いんじゃないかと思います。だから、地域で何かやってみたいと思った時に、洲本はスタートしやすい場所かもしれません。

高橋さん 冒頭で若い人たちが減っている話をしたんですけど、洲本市出身の若者や市外の若者にとって「憧れ」が持てるようなプロジェクトやビジネスをおこしていきたいですね。「あんなことやってみたい」とか「あのプロジェクトに関わってみたい」とか、そんな気持ちを持ってくれたら嬉しい。つまり、洲本市を好きになってくれる人を増やしたいんです。それは若者だけではなく、地元の皆さんも。洲本に住んでいることや、洲本の勢いに関わっていることに「誇り」を持ってほしい。そのきっかけを、コンソーシアムでつくることができれば、洲本はもっとおもろくなると思います。

気持ちのいい場所で働くことだけが、ワーケーションじゃない。オープンイノベーションが生まれる、第2のしごと場。

オフィスで気がつくと遅い時間。
デスクで、PCや資料とにらめっこする生活でした。

— 前田さんは建築設計士として活動中とのことですが、ふだんはどんな働き方をされているんですか?建築業界って夜遅くまで働いて、ひたすら設計図を書いているイメージがあるのですが…

まさに、おっしゃるとおりですね(笑)。今年はコロナの影響で在宅ワークの割合が増えたんですが、ずっとデスクにいて、気づけば22時になってるみたいな。ごはんを食べることも忘れて、PCや資料とにらめっこし続けているときもあります。そんな働き方をしていると、仕事中は人と会話することも減るし、知らぬうちに全身に力が入って呼吸が浅くなり、身体がかたくなってしまう。忙しくなると、気持ちが滅入ってしまうこともありました。

— 働き方を見直したくても、目の前の仕事に手一杯みたいな。

そうなんです。自分でもこの働き方は良くないなあ、改善したいなあと思っていて。ある日、上長と面談をしたときに言われたのです。「場所を変えて働いてみたら?ワーケーションの企画書出してみてよ」って。それがきっかけで、ワーケーションに興味を持つようになりました。

ワーケーションってどんな感じ?
自分で試して、淡路島の魅力を肌で感じた。

— ワーケーションって、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、一般的にはリゾート地などで休暇を過ごしながら働くことを意味しますよね。前田さんがイメージされた働き方も、そんなイメージですか?

最初はそうでした。景色のいい場所でゆったりとくつろぎながら、たまに仕事するみたいな。でも正直、くつろぎながら仕事をするのは自宅でもできるし、近所のカフェに行けばいい。だから僕の理想としては、ただ景色のいい場所で仕事をするというよりは、仕事の質が高まる体験があったり、視野を広げてくれるような人との関係性が築けたりと、オープンイノベーションが加速するきっかけになればいいなと思ったんです。

— 働き方や、仕事の質もアップデートされる装置のような。

そうですね。私が勤めている日建ハウジングシステムは、新しいことにどんどん挑戦する社内文化があって、働き方も人それぞれ。最大限のパフォーマンスを発揮できるように、工夫している人が多いように思います。そんな社風にも背中を押されて、まずは自分がワーケーションを実践してみて、社内制度として推進する動きをとりはじめました。それが2018年頃だったかと思います。

— その実践の舞台が、淡路島だったということでしょうか?

はい。なんで淡路島だったかというと、職場の元先輩の富田さんが、淡路島でシマトワークスとして起業されていて。現地での活動や暮らしぶりを耳にして、いつかはじっくり話してみたいと思っていたんです。たまたま仕事で淡路島へ行く機会があり、「これはチャンスだ!」と思い立って、富田さんに連絡をとりました。仕事のスケジュールよりも前倒しで現地入りして、島の幸をふんだんに使った料理を食べさせてもらったり、島で活動されているおもしろい方々の話を聞かせてもらったり。挙句の果てには、翌日からタクシー移動を想定していたのですが、「それは無理だよ!」って、移動手段やルートをコーディネイトしてもらいました(笑)。

— その後、淡路島との行き来はありましたか?

プライベートで足を運ぶようになりましたね。富田さんに紹介いただいたイチゴ農家さんが営まれている畑で農作業を体験してみたり、飲み会に参加させてもらったり。

休日に淡路島を訪れて、畑仕事を体験。土や草にふれることが、ちょっとしたリフレッシュに。
カフェのオーナーや、農家、日本酒の杜氏など、多様な分野で活躍する個性ゆたかな淡路島メンバーが集まる飲み会に参加。

— 淡路島では、プライベートの遊びとして過ごす時間が多かったですか?それとも、仕事をする時間をつくったりされましたか?

プライベートな時間が大半でしたが、そのついでに仕事することもありましたね。遊びと仕事を切り分けるというよりは、ごちゃまぜになっている感じ。遊びのつもりで行っても、富田さんと仕事の話をしたり、淡路島での働き方を聞かせてもらったりと、会社の新しい働き方や仕事づくりに結びつけられないか、ワーケーションのトライアルとしてネタ探しに行っているような感覚でした。

飲み会に参加したことがきっかけで、畑の屋台小屋の設計を手伝うことに。
デスクではなく、土の上で設計図を書いてみたりも。

— そのなかで感じた淡路島の魅力って何ですか?

何よりも、食べものがおいしいんですよ!海の幸も、山の幸も、淡路島は自然の恵みがゆたか。おいしいごはんを食べるって、それだけでも楽しみのひとつになりますよね。あと、僕は鳥取県出身なので、自然環境が気持ちよくてのんびりとした時間が流れているのも、居心地よく感じる魅力だと思います。大阪から車で1時間ちょっとで行けるし、距離感がちょうどいいんです。

がっつり仕事も、ゆったりリフレッシュも、人との交流も。
次へのステップになる、島じかん。

— 2020年9月に淡路島で開催されたワーケーションのモニターツアー「未来の働き方を考える4日間」にも参加されたのですよね。

ワーケーションを会社に導入するための検討材料として、予算を確保して参加しました。上長もワーケーション導入には乗り気だったので、参加を後押ししてくれましたね。

— 4日間、どんなプログラムがあったのか教えていただけますか?

各自の仕事に取り組むワークタイムと、自分の健康について考えたり、自分を見つめ直したりするリトリートの時間がありました。ワークタイムが確保されていたので、オンラインミーティングをしたり、作図したりと、ふだんと変わらず仕事に励むことができました。

リトリートの時間では、瞑想したりストレッチをしたり、自分としずかに向き合うことが多かったです。特に印象にのこっているのは、海辺での瞑想。波の音に耳をすませながら、少しひんやりとした空気を吸い込んで、ゆっくりと吐いて、身体を心地よくのばして。自分の身体のすみずみに意識をめぐらせて、状態を知るんです。この体験がいちばん気持ちよかったですね。ほっと落ち着いて、いい方向に心と身体が動くのを感じました。この体験があってからは、仕事の打ち合わせ前や移動中には、プチ瞑想を取り入れるようになりました。資料作成でバタバタとしても、打ち合わせ前には目を閉じて深呼吸する。すると、落ち着いてプレゼンにのぞむことができるのです。

— ツアーでの経験が、早速仕事にも活きているのですね。

はい、瞑想は意識的に取り入れています。上手くいかないことがあっても、いい意味で開き直れるというか。いつも新鮮な気持ちで、仕事にのぞめています。

朝6時30分から、海辺で瞑想とストレッチ。自然が身近にあるのも、淡路島の魅力のひとつ。
シェアサイクルをレンタルして、山の上までひとっ走り。
山の緑も、海の青も美しい淡路島。心地よい海風を浴びながら、リフレッシュ。

モニターツアーには僕以外にも参加者が多数いて、皆さんとの交流も楽しかったです。世界一周をしてゲストハウスを営んでいる人、シェアハウスを転々としながら多拠点生活を実践している人。オフィスで作図しているだけでは出会うことのない方と対話して、自分にはなかった視点を得ることができました。そこで出会った方とは今もつながっていて、取り組みを知っては刺激をもらったりしています。今まで持っていなかったチャンネルの新しい情報がどんどん入ってきていて、仕事面でも次のステップへ踏み出すきっかけになっていると感じています。

人、もの、情報とオープンにつながり、
今はまだない働き方やビジネスを、淡路島からつくっていく。

— モニターツアーを経て、ワーケーション導入に向けて社内でどのような動きをとられていますか?

モニターツアーに参加してみて、やっぱりワーケーションは有意義だと身をもって実感したんです。シマトワークスの提供するワーケーションは、自分のメンタルの状態を数値化して見つめ直すこともできるし、社員の健康増進にもつながる。ワーケーションを導入したい気持ちが、より一層強まりました。社内で検討を重ねた結果、2021年からワーケーションが制度化し、トライアルが開始されます。さらに今は、上長との議論のなかで、淡路島に拠点をつくれないかという方向性になっていまして。淡路島との接点にもなってくださった富田さんにも相談して一緒に企画書を練りながら、上長に提案しています。都市部から離れて、自分の働き方を見つめ直したり、他分野で活動する人との出会いから新しい発想が生まれたり。そんな風土が会社に根づけばと思っています。ゆくゆくは多様な企業と連携して、ワーケーションからオープンイノベーションに発展する仕組みをつくっていきたいですね。

— 前田さんご自身がワーケーションを実践されてみて、何か変化はありましたか?

以前にも増して、心身ともにいきいきしてると感じます。ワーケーションを導入する前は、仕事の忙しさに滅入ってしまったこともあったんですけど。淡路島の雄大な自然にふれて、新鮮な気持ちで仕事に取り組み、おいしいごはんを食べながら多様な人たちと語り合い、視野が広がって。島で出会う方一人ひとりがおもしろくて、暮らしぶりも僕にとっては斬新だったんです。自分の心を前向きに後押ししてくれる出会いが連鎖的に起こるのは、淡路島の魅力でもあり、シマトワークスさんが持つつながりのおかげでもあると思います。

— 淡路島ワーケーションをおすすめするとしたら、どんな人に紹介したいですか?

会社に所属していて、組織の方針や仕事のスタイルに悩んでいる人っていると思うんです。会社の体制を変えるのは容易なことではないけれど、ワーケーションはそのきっかけのひとつになると思います。仕事について悩んでいる人や将来を不安に思っている人は、一度ワーケーションを実践してみるといいのではないでしょうか。

— 最後に、前田さんがこれからめざす働き方や暮らし方を教えていただけますか?

今は大阪が本拠地ですが、今後は2番目、3番目というふうに拠点を増やしていければと考えています。そのひとつが、淡路島。多様な人やモノ、情報にふれられる場所を築いて、組織に所属しながらもオープンなつながりを広げていきたいです。今は、淡路島の人たちが運転する車の後部座席に乗って案内してもらっている感じなのですが、ゆくゆくは自分が運転席に座っていろんな人や情報を有機的に結びあわせて、新しい価値観やムーブメントを生み出していきたいです。

「わくわく」を共有し、
「わくわく」をさらに淡路島で広げていきたい。

ワーケーションの価値を転換する。

コンソーシアムの立ち上げを考えたのは、2020年の冬ごろだったと思います。当時は、淡路島を拠点とした自社サービスのワーケーションプログラム「workation.life」の準備をしていた時期。2021年春の運用スタートを目標に、都市部の企業さんにプログラムのモニターとして参加していただきながら、ワーケーションの社内制度化にむけて企業さんと議論を重ねていました。その時に感じたのは、オフィスを離れて環境を変えて働くというメリットだけでは、社内制度化に結びつきづらいということです。私はワーケーションを「働き方に”インターバルを取る」”と表現していて、その価値を企業さんに提供したいという想いからワーケーションプログラムをスタートしたのですが、思うほどスムーズには進まなくて。

Workation Hub 紺屋町」のシェア型サテライトオフィスで、企業さんと打ち合わせ中。

それ以上に、企業さんにとっては淡路島を拠点に新規事業やローカルビジネスをスタートしたり、多様な企業とオープンイノベーションを図ることに価値を感じているんだと実感しました。コンソーシアムを立ち上げることで、淡路島の資源や地域課題をタネに、企業さんと協創しながら新しいビジネスやプロジェクトの芽が生まれる。それが間接的に、ワーケーションにつながればいいと考えています。

事業やプロジェクトがいくつも生まれている。

2021年5月に、洲本市のまちなかに「はたらくを楽しむためのハブ拠点 Workation Hub 紺屋町」をオープンしました。今は個人利用の方が20名ほど、法人で契約いただいている企業さんが3社います。個人利用の方の中には、洲本の地元の方もいますし、遠いところだと宮城県に住んでいる方も。企業さんは、建築設計や環境コンサルに携わる会社さんなどです。企業さんとは、すでにいくつかの事業やプロジェクトがスタートしています。例えば、洲本市の環境保全をテーマに、グリーンツーリズムを計画していたり、大学と提携して竹を利活用したキャンプ道具の企画を考えていたり。

島の仲間とプロジェクトの相談をしているところ。

淡路島・洲本市を拠点にローカルビジネスや、オープンイノベーション、SDGsに取り組みたい事業者さんがいらっしゃれば、ぜひ一度声をかけていただきたいです。ハブ拠点を打ち合わせや仕事スペース、簡易な宿泊施設として利用いただくことも可能ですし、洲本で活動している事業者さんとのマッチングや、島内で事業を進めていく上での助言なども、皆さんの声やご要望に応じてサポートします。

「わくわく」を共にしていきたい。

シマトワークスを立ち上げる前、私は建築設計の仕事をしていたんです。2005年からフリーランスになって、初めての建築の仕事が淡路島の物件でした。それをきっかけに、地元の神戸から淡路島へ足を運ぶようになり、島の人たちとのつながりができたり、仕事の傍ら淡路島でイベントを開催したり、事業を立ち上げたり。洲本にいる事業者さんは淡路島のことを誇りに思っている人がたくさんいて、その人たちが放つ輝きにも惹かれましたね。2011年に洲本へ移住して、もう15年以上淡路島には関わっています。シマトワークスを立ち上げたのは、2014年。「わくわくする明日をこの島から」をモットーに、食や人、文化などたくさんの島の資源を活かし、島に寄り添いながら、わくわくする企画を手がけてきました。

島の仲間と始めた観光農園。屋台も自分たちで設計してDIY!

シマトワークスのモットーにもあるように、「わくわくする」ことは私にとって最重要基準なんですよ。どれだけお金をもらえるとしても、「わくわく」しない仕事はやらないから(笑)。じゃあ、私にとってどんな時に「わくわく」するかというと、それは5つあって。自分にとって学びがある時、アクションを起こしている時、感度が広がっている時、人とつながった時、誰かとシェアできた時。自分が仕事で「わくわく」しない時は、この5つのうちどれかが欠けている時なんです。

淡路島・洲本で新規事業の立ち上げを検討されている方は、ぜひこの「わくわく」を共有できる事業者さんだと嬉しいなと思います。そんな気持ちを共にしながら、一緒に事業やプロジェクトを生み出していけたら、そんな幸せなことはありません。

ワーケーションプログラム立ち上げの経緯について、こちらの記事も合わせてどうぞ。

シマトワークスのメンバー。2021年春にオープンした「Workation Hub 紺屋町」前にて。