仕事(Work)と休暇(Vacation)を両立させた造語として、「ワーケーション」という言葉が誕生しました。近年は、SDGsや働き方改革に積極的に取り組む企業の数が増加傾向にあり、従業員の新しい働き方の一つとしてワーケーションが注目されています。
しかし、企業でワーケーションを導入するにあたって、具体的なメリットやデメリットの把握が欠かせません。なんとなくワーケーションを導入してしまっては、社員の業務効率が低下するだけでなく、コストも無駄に払うことになるでしょう。
そこで、ワーケーションの導入を考えている企業がチェックしておきたいポイントを解説します。
菅 堅太(すがけんた)
2015年関西学院大学総合政策学部卒業。1992年大阪生まれ。東京の出版社や編集プロダクションで務めたのち、Web記事制作の会社を設立。自身で記事執筆を行う傍ら、フリーライターの方たちの育成に尽力している。
ワーケーション導入のメリット
いつものオフィスとは違う場所で仕事に臨めるほか、余暇の観光なども楽しめるワーケーションですが、どういったメリットがあるのでしょうか。
企業と社員、2つの視点でご紹介します。
企業にとってのメリット
まずは、企業がワーケーションを導入することで得られる3つのメリットを以下にまとめました。
社員の満足度を高められる
社内にワーケーションの制度を導入すれば、利用した社員のエンゲージメント向上が期待できます。
ワーケーションは、都会から離れた観光地などで仕事を行うことが多いため、オン・オフの切り替えが用意に可能です。
会社の制度として設けられていれば社員も利用しやすく、自社への満足度も高まるでしょう。
働き方改革や福利厚生としてアピールできる
企業にとって「優秀な人材をいかに確保するか」は、経営を続けていく上でも重要な要素の一つです。
新卒や転職者は、企業の福利厚生や従業員の働き方などを参考にしているため、働き方改革への取り組みや福利厚生の一環として、ワーケーションは大きなアピールポイントになります。
地域や人脈の幅が広がる
ワーケーションの魅力は、従業員の満足度向上や福利厚生だけでなく、事業にとって好影響を与える可能性を持っています。
ワーケーションの実施場所によりますが、淡路島に新設されるシェア型サテライトオフィスでは、複数の企業やフリーランスの方が利用できるのが大きな魅力です。
新たな人脈の形成に繋がる可能性があるほか、淡路島に根ざした企業が運営を行なっており、企業同士のマッチングや経営に関する相談なども可能です。
ワーケーションを行う場所で生まれたご縁から、新規案件を紹介してもらえることもありえるため、ワーケーションは高いポテンシャルを秘めた取り組みといえます。
社員にとってのメリット
続いて、従業員が得られるメリットを紹介します。
仕事へのモチベーションが高まる
まず、リゾート地などの自然や観光スポットがある場所は、誰しも気分が高まるものです。満員電車や都会の喧騒から離れられるワーケーションでは、山や海などを感じながら仕事に臨めるため、従業員のモチベーションも高まります。
また、ワーケーション制度と休暇と合わせることで、長期滞在も可能なので、従業員のワークライフバランスにも好影響を与えられるでしょう。
作業効率が高まる
ワーケーションでの仕事は主にリモートワークが中心となるため、オフィスに掛かってくる営業電話などの対応も不要です。また、人によっては他の社員から話しかけられることで業務が滞ることもあるでしょう。
オフィスから離れた地で仕事ができるワーケーションなら、自身の作業に集中して取り組めるのが大きなメリットと言えます。
ストレス軽減
仕事に取り組みやすい環境が整っているだけでなく、手軽に休暇を楽しめるのもワーケーションの特徴です。
例えば、散歩することで神経伝達物質のセロトニンが分泌され、ストレス低減の効果が期待できます。特にワーケーション実施地が森林の多いエリアなら、フィトンチッドと呼ばれる樹木の成分から、より高いリラックス効果を得られるでしょう。
さらに、体を動かすことで脳への血流が促され、アイデアが出やすくなるという研究結果もあるため、結果的に業務が捗ることに繋がるかもしれません。
ワーケーション導入のデメリット
ワーケーションは企業や従業員にとっての利点が数多くありますが、導入することによって生じるデメリットが全くないとは言い切れません。
ここでも、企業と社員の2つの視点から紹介します。
企業にとってのデメリット
ワーケーション導入を検討している企業は、コストや社員の働き方などを把握しなければ、せっかくの取り組みも効果が得られない可能性もあります。
逆に言えば、以下に挙げた4つのポイントをクリアすることで、ワーケーションのメリットを存分に得られるため、ぜひ確認しておきましょう。
導入コストがかかる
ワーケーションを行うためには様々な準備を行う必要があり、それに伴って時間や金銭的なコストが生じてきます。
実施地ではリモートワークが主体となるので、インターネットなどの通信機器が整った環境が欠かせません。企業によっては、新たにPCを手配したりオンライン会議用のソフトを用意したりする必要性が生じるでしょう。
ワーケーションに取り組む企業は、「自社で導入すれば、どれくらいのコストがかかるのか」を把握しておく必要があります。
セキュリティ面の整備
遠隔で仕事を行うワーケーションでは、作業をする環境のセキュリティにも注意しなければなりません。
不特定多数の人が出入りできる場所で仕事を行なってしまうと、PCなどの危機が盗難に遭うリスクも考えられます。また、カフェなどのフリーWi-Fiでログインすると、アカウントが乗っ取られる危険性もあるでしょう。
ワーケーション導入に際し、事前にシェアオフィスなどのワークスペースを借りるのも一つの手です。その場合、自社ではどのレベルまでセキュリティを求めるのかを明確にしておきましょう。
勤怠管理が難しい
社員が集まる本拠のオフィスと異なり、ワーケーションでは従業員の勤怠管理が難しい点もデメリットに挙げられます。また、業務内容によっては進捗管理を行いにくく、人事もワーケーションに向かった社員の人事評価を付けづらくなるかもしれません。
ワーケーションを導入する際は、勤怠ルールを設けるのか、勤怠管理システムを導入するのか、事前に決めておくのが無難です。
導入できない企業もある
企業によっては、ワーケーションの導入が困難なケースがあることも把握しておきましょう。
特にホテルや飲食店といったサービス業は仕事場から離れづらいため、デスクワークがメインの業界に比べるとハードルが高いと言えます。
社員にとってのデメリット
企業にとってのデメリットは、環境を整えるために配慮すべきポイントでしたが、社員も仕事をする上で知っておくべきデメリットがあります。
オン・オフの切り替えが必要
リゾート地や観光地でリフレッシュしながら仕事に臨めるワーケーションですが、旅行気分が抜けずにON/OFFの切り替えができない方もいます。
企業の管理体制が整っていなければ、従業員もノルマや目標を持たずにだらだらと仕事を進めることになりかねないでしょう。
しかし、企業側の体制にかかわらず、社員自身が「今日はここまでやる」「2時間おきに15分の休憩をとる」などのルールを決めることが大切です。
業務が滞り経営に悪影響が出た場合は、せっかくのワーケーション制度を企業が取りやめる可能性もあるため、仕事と休みのバランスを調整しましょう。
顧客対応が難しくなる場合がある
本来のオフィスから離れてワーケーションに出かけていると、顧客への対応が疎かになる可能性もあります。重要な書類のやりとりが必要なシーンでは、書類の確認や発送などが自らできず、他の従業員に迷惑をかけることもあるでしょう。
ワーケーション制度を利用する従業員は「自分がワーケーションに行っても問題ないか」を確認し、社内や社外の関係者にも連絡しておくのがおすすめです。
仕事と休暇の満足度を上げられるワーケーションですが、全てが中途半端にならないよう、準備を進めてから向かいましょう。
ワーケーション導入で確認しておくべきポイント
ワーケーションでの仕事と休暇を両立させるため、企業が押さえておくべき3つのポイントを解説します。
作業場所の確保
ワーケーションではリモートで仕事を進めるため、ワークスペースの確保が重要です。シェアオフィス、サテライトオフィスなどは通信設備や作業場所が用意されており、ワーケーションの実施に適した環境と言えます。
その中でも、自社が求めるレベルのセキュリティが整備されているか、オンライン会議用の個室などの業務に必要な設備があるか、オフィスの状況をチェックしておきましょう。
ワーケーション先での過ごし方をリサーチ
ワーケーションは、仕事だけでなく休暇への配慮も欠かせません。作業場所の周辺に息抜きできるスポットがあるだけでも、従業員の満足度は違ってきます。
シェアオフィスやサテライトオフィスを利用してワーケーションを行う場合、オフィスの担当者に利用目的や周辺の情報なども聞いておくと良いでしょう。
社内での制度や運用に関するルールを設ける
ワーケーションは、「導入しました!利用しましょう!」だけでは十分な成果を得られません。
もしオフィスを借りて実施する場合、費用がいくら必要かを確認する以外にも、どれだけの社員が月に何回利用できるか、どうやって利用を促すかといった点に着目しましょう。
実際に社員が利用する際も、事前に勤怠管理などのデメリットをクリアしておくことが重要です。
また、企業内で労災の適用範囲も取り決めておくと、リスク回避にも繋がります。ワーケーション中の行動で「ここまでなら労災として認める」など、従業員への通達も行いましょう。
ワーケーションを導入している企業
ワーケーションのメリットやデメリットを紹介しましたが、ここでは実際に導入している企業の事例をまとめました。
自社でも当てはまるか、導入するなら何を重視するかといった点を意識しながら、ぜひ参考にしてみてください。
JAL
JALの名で知られる日本航空株式会社は、ワーケーションに取り組んでいる企業の一つです。導入した背景には、従業員の所属部門ごとに業務や残業時間が異なり、休暇取得率の低さが問題視された経緯があります。
2017年からワーケーションを導入することで有給を取得する割合が増え、残業時間を減らすこともできました。
また、旅行関連の業界ではJTBも行っており、新アイデアの提案や社員のストレス削減に効果があったと言われています。
三菱UFL銀行
三菱UFJ銀行は従業員が柔軟に働ける環境を整備するため、2019年に軽井沢でワーケーションオフィスを新設しました。
「森の中のオフィス」をイメージしたワークスペースでは、窓から軽井沢の自然の眺望を楽しめます。
実際に利用した社員から「集中して仕事に臨めた」、「リラックスできた」という声が上がり、企業が社員の生産性や創造力の向上に尽力していることが分かります。
ユニリーバ・ジャパン
日用品・食品ブランドのユニリーバ・ジャパンも、2019年から「地域 de WAA」と題してワーケーションに取り組んでいます。
WAAとは、Work from Anywhere and Anytimeの略で、従業員が働く場所や時間を自由に選べる新しい働き方です。
ワーケーションに参加した従業員は、幸福度や生産性の高まりを実感したようです。
さらに、ユニリーバ・ジャパンは地域に根ざした働き方を推奨することで、現地絵のビジネスモデル構築も視野に入れています。
日建ハウジングシステム
住宅の設計や建築コンサルタント業務を行なっている株式会社日建ハウジングシステムは、2020年よりワーケーション導入を進めている企業です。
同社に勤める前田賢一さんは、淡路島でワーケーションを体験された方の一人。本サイトでも取材を行わせていただいたので、詳細は以下よりご覧ください。
気持ちのいい場所で働くことだけが、ワーケーションじゃない。オープンイノベーションが生まれる、第2のしごと場。
ワーケーションに取り組んでいる地域
ワーケーションは、利用する企業・従業員に対して、受け入れ側である地方の自治体も積極的に取り組んでいます。
ここではワーケーションに取り組む代表的な地域のほか、淡路島での取り組みも紹介します。
和歌山県|白浜
県内で一丸となってワーケーションに取り組んでいる和歌山県。ネット環境を整備した大規模商業施設を作って企業や個人が不自由なく仕事を行える環境を整えています。
また、和歌山県には世界遺産の一つに数えられる熊野古道もあり、自治体がワーケーションと絡めた企画を考えているようです。
長野県|軽井沢
三菱UFJ銀行が軽井沢にオフィスを建てましたが、同地は自治体もワーケーション誘致に積極的です。
もともと軽井沢はリゾート地として人気のエリアなので、都会の喧騒を離れた自然の中で滞在できるほか、豊富なアクティビティや温泉なども楽しめるのが魅力です。
兵庫県|淡路島
兵庫県の淡路島でもワーケーションへの取り組みに動き始めています。大阪や神戸からのアクセスがよく、関西エリアでもワーケーションに適した場所と言えるでしょう。
近年は人材の大手企業が淡路島に本拠を移しましたが、新時代の働き方を目指してワークスペースや設備の準備が進んでいます。
また島内の洲本市では、2021年春にシェア型サテライトオフィスが完成予定です。地域に根ざした企業が運営に携わっており、ワーケーションの拠点として活用できます。
ワーケーションを行うなら淡路島がおすすめ!
ワーケーションは、これからの働き方に合った取り組みの一つですが、導入を考えている企業にとっては「どこが良いの?」と疑問に思うこともあるでしょう。
導入までの準備やコストを削減するなら、地方でオフィスを借りるのがおすすめです。中でも、淡路島のシェア型サテライトオフィスなら、仕事環境が整っているだけでなく、バケーションの面でも運営側が丁寧にサポートしてくれます。
観光やグルメなど、まだまだ認知されていない部分もある淡路島ですが、ワーケーションを機に同地の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。